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執筆者の写真黒木志穂 (Shiho Kuroki), NGP Associate Consultant

もったいない精神を今こそ見える化しよう (Part 2)


イギリスのThe Duchy Organic(ザ ダッチー オーガニック)は、サステナビリティにおいてユニークな経験とアプローチを持っています。


The Duchy Organicは、1990年にチャールズ皇太子が発案したブランドで、2010年から高級スーパーのWaitrose(ウエイトローズ)が運営しています。1983年以来、Waitrose社はオーガニック食品を日常生活の身近なものにしており、The Duchy Organicの製品群は300以上にもなります。


The Duchy Organicは、オーガニックを購入することは、環境と調和した持続可能な方法で食料を生産し、最高基準の動物福祉を満たし、農地で動物らしい生活の実現を支えることだとしています。パッケージでは、ロゴとオーガニックのフォントに金色を採用し、皇太子の慈善活動である持続可能な農業の発展を支援するブランドの約束が目に飛び込むようにデザインされています。また、Good causes(慈善事業)とGood farming(良い農業)は、大きな手書きの書体で、他とは一線を画す様になっています。


The Duchy Organicは、象徴的なブランドリーダー、明確なビジョン、消費者や農家に約束したことを実現してきた実績、そして素晴らしいブランドコミュニケーションを持ち合わせているブランドです。そしてビスケットの味が美味しいという事も付け加えておきましょう!



英国ブランドからの学び


上記から日本企業が学べることは、サステイナブルな顧客のセグメンテーションです。The Duchy Organicは、高級でも安価でもないプレミアムオーガニック市場をターゲットにしており、それを軸に商品提供、チャネル、ブランドコミュニケーションを展開しています。


現在の日本市場では、サステナビリティを積極的に支持する人、サステナビリティやオーガニックに付随する安心感や安全性を評価する人、サステナビリティをカッコイイと思う人の3グループがあり、それぞれ異なるモチベーションで動いています。


第一グループは、企業や製品の目的や価値感、第二グループは機能、そして第三グループはストーリーやデザインに、共感や愛着を持ちます。そして第二グループは感じずとも、第三グループは、日本で主流となっているミニマムスタイルのオーガニックパッケージに物足りなさを感じているかもしれません。「オーガニックは不要なものを含まない」という考えは正しいですが、「つまらなくて良い」という訳ではありません。


加えてサステナビリティを前面に押し出した商品群を、もっと日本市場で発売しても良いのではないでしょうか?カルビーであるならば、責任を持って調達されたジャガイモを使用したオーガニックシリーズのポテトチップスの展開です。製品のライフサイクルの観点から環境、社会、人に対する持続可能性も考えた製品であればなおさら消費者の共感を呼ぶでしょう。


また、日本の消費者の70%が、有機JASマークなどの認定の意味を理解していないと回答しています。ここから、「この商品を購入することで、より良い世界を作ることに貢献できる」というダイレクトなメッセージを持つ商品が求められており、ブランド名、ブランド構造、ビジュアル/バーバル・アイデンティティ(見え方・伝え方のガイドライン)が、サステナブルなブランドの明確なポジショニングを手助けするでしょう。


最後に「能ある鷹は爪を隠す」に代表される日本のコミュニケーションスタイルは、脇に置いておく必要があります。ブランドが消費者と対話するとき、消費者が置かれている状況の課題にブランドが取り組むことができれば、より一層の共感と信頼を得ることができます。The Duchy Organicが持続可能な農業を支援しているように、消費者は「環境に優しい」という言葉を小さな文字で添えておくのではなく、インパクトのある大胆でエシカルなブランドを待っているのです。



*Reference


https://www.calbee.co.jp/newsrelease/200914a.php



https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/jp/Documents/consumer-business/cp/jp-cp-consumer-after-covid-19-1.pdf


https://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2019/11/20191118.pdf


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